「自立」
あっという間の秋も終わり、冬の気配が忍び寄ってくる季節になった。村のあちらこちら
のエントツからは、暖かそうな煙が上がっている。脇野沢村は漁村であると同時に山林を
背後に控えているので、昔から薪を利用したストーブが多く、今でも石油ストーブよりも
人気が高い。また、薪の方が体の芯まで暖まるということもあり、実用面でも実証されている。
その差は、ステーキを焼く時に、炭火を使って柔らかく焼けるのを想像していただけば、
理解していただけると思う。
さて、12月になると初雪の季節でもあるが、春に生まれたアカンボウにとっては一番
大変な時期にもなる。もちろん、母親は寒さなどからわが子を守る行動をとるが、基本は
「自分のことは自分でしなさい」を実践する態度で接する。
例えば、生後まもなくのよちよち歩きのアカンボウが、傍らの木に興味を示して木登りを
始めても、母親は無関心を装う。こどもが苦労していても構わず、ひたすら見守り続ける
。アカンボウが木から落ち、悲鳴を上げても、まだ、じっと様子を見る。そして、さらに
声が高くなると、始めて手を差し伸べて介添えをする。観察していると、母親は、ぎりぎ
りまで我慢している様に見受けられる。いい意味での放任主義で、こども自身の「自立」
を待っているのである。自分で転んだら自分で起きろ、と、目で伝えているのである。
私たち人間社会で、急速に失われつつある心の強いつながりが、かれらの世界に定着し
ているような気がする。
母親とアカンボウ。こどもが自立して大きくなっても、いざとなれば寄り添い、かばい
あう姿を、私たちは少し見習ってもいいのではないか、と思うこの頃である。
いそやま・たかゆき