
「桜の木で怯える死亡したオスザル(撮影:8月2日)」
7月29日夜、脇野沢村の野猿公苑のオリの鍵が壊され、「サル山」に収容されていた
50頭の「北限のサル」が外に逃げ出してしまうという、前代未聞の事件が起きました。
幸いにして、翌朝、連絡を受けた飼育員が急行して、オリのそばにいた43頭を収容しました。
翌31日には、小さなアカンボを抱える親子2頭が自らオリに飛び込んで戻り、8月2日と
5日にオスザル2頭が捕獲できました。しかしうち1頭が、収容2時間後に死亡してしまいました。
原因は、慣れない自然の中での不安、恐怖によるストレス、餌も採取できなくなって体力の
衰弱など、生活環境の急激な変化による結果ではないかと考えています。そして、現在もなお、
春に生まれたアカンボを抱える親子とオスザル3頭の行方がわからず、情報もないままです。
野猿公苑のサルは、猿害防止のため捕獲収容されて18年が経過しています。ニホンザルの
寿命は20年〜25年なので、ほとんどのサルがオリの中で生まれて育ったことになります。
餌はダイズやトウモロコシが主で、それも人から貰い続け、自活する能力を必要としないまま暮らしてきました。
外に出たサルたちの様子を観察しても、木に登ることもなく、地面に生えている草さえも
むしりませんでした。森の中で生活しているサルとくらべると、まるで違う動物のように思
えました。死んでしまいましたが、捕獲したサルが見つかったのが民家が密集する場所です。
開放されたものの、最後に逃げ込んだのが、森の中ではなく人間が生活している場所だったのです。
かわいそうな気もしますが、サルたちの心中は戸惑いの連続だったことでしょう。
道具を使ってまで鍵を壊した人は、サルの為だと思って開放したのかもわかりません。しかし、
結果は、ストレスで死亡したオスザル、一ヶ月経過してもなお消息不明の親子を含む3頭など、
「北限のサル」自身を苦境に追い込んで被害者にしてしまいました。
今年は長く暑い夏でしたが、「サル山」のサルたちにとって一生忘れられない夏になりそうです。
文責 いそやまたかゆき
2000.9