牛ノ首物語・1

「牛ノ首」
下北半島はまさかりの形をしている。柄にあたる部分は太平洋に面し、北には津軽海峡が流れ、歯に
あたる西海岸には急峻な崖が連なり下北半島国定公園の代表的な地形を有している。そして、半島を反転
させたようなむつ湾を抱え込み、ホタテ養殖の重要な環境を整えている。
脇野沢村は、半島の南端に位置する面積約59I、人口2,700余名の漁村。冬のマダラ漁が有名で、
別名「鱈の里」とも呼ばれ、昭和20年に戦闘機を二機国に献上した誉れが歴史に残る。
村の南端に小さな山塊がある。山といっても標高は80m、面積25haほどの丘陵で、地図には牛ノ首岬
と表記されている。名の由来は、海から見ると牛が座り込んで首をもたげている姿に見えるところから呼称
され、漁師たちのあいだでは、単に「牛ノ首」と呼ばれている。
頂上から陸奥湾が一望出来、500mの沖合には脇野沢村の象徴にもなっている「鯛島」が浮かぶ。天気
の良い日には、岩木山や青森市のアスパム等の市街地を肉眼で見ることも出来、眺望のいい場所である。
植生はブナ、ミズナラを主とした雑木林で、地面にはさまざまな種類の植物が成育する。日当たりの関係で、
村の中では雪解けが早く、一足早くフキノトウが顔を出し、続いてフクジュソウ、カタクリ、キクザキイチゲ
、ヒトリシズカといった春の植物カレンダーが次々に展開する。さらに、この地域には特別天然記念物の
ニホンカモシカが定住し、天然記念物の「北限のサル」も度々訪れ、アナグマなど野生動物との出会いも
期待できる。さしずめ、自然の宝庫である脇野沢村のミニチュア版といったところでもある。
私がこの地に移住した1987当時は、集落の近くに2カ所、頂上付近にも小さな畑が耕作され、ラジオを
聞きながらのんびり農作業をする村人の姿があった。1995年、牛ノ首一帯が公園として整備され、畑だった
所は駐車場に変わり、山腹に幾筋もの歩道がつくられた。道の傍らには脇野沢村を代表する植物も新たに
植えられ、名札が付けられ、手軽に自然散策が楽しめる牛ノ首農村公園として生まれ変わった。
21世紀を迎え、風景は様変わりしたものの、植物をはじめ、サルやカモシカたちは以前と同じ生活を続
けている。かれらの目線になったつもりで、牛ノ首の14年間を、エピソードを交えながらお伝えします。
写真キャプション
No.1-010705A…脇野沢村、小沢から見た牛ノ首。左は鯛島。
撮影:平成13年7月5日
いそやまたかゆき