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| 「ツツジ」というメス頭がいた。ツツジは一時こどもと孫をあわせて22頭の家族を持っていた。メスはいざとなると血縁でかたまり、数で相手と対決する。シャチはツツジの力を熟知していた。 こんなことがあった。「カキラン」という若いメスがツツジと些細な喧嘩をはじめた。カキランは最下位のメスで、本来ツツジとは喧嘩にならないが、この日は違った。ツツジが珍しく声を荒げた。すると何処にいたのか、シャチが飛んできて、凄い形相でカキランを追い回した。「ギャン、ギャン」。森に悲痛な声が響きわたった。シャチは容赦せず、カキランを追いつめて背中に噛みついた。「ギャフッ」。一声で森に静寂が戻った。ツツジは涼しい顔でうたた寝をはじめていた。 オスのメスに対するアピールは当たり前のこと。しかしシャチのツツジに対する反応は異常なくらい過敏だった。ツツジの声を聞き分けているとしか思えなかった。人間社会でいうところの「えこひいき」。シャチはツツジの用心棒に徹することで、あしかけ16年もの長い期間のボスザルの地位を保っていた。 01年にツツジが死亡してから、急速にシャチの足場が不安定になった。ツツジの後継者の一時的な分散、群れ頭数の増加、年齢の衰えなどさまざまな要因が考えられるが、ある日突然シャチは、自ら身を引くように群れを去った。でも利口なシャチのことだ。どこかの群れにはいって、木の上でうたた寝でもしていることだろう。現在はナンバー2だった「カナガシラ」が後釜に座っている。 終わり |
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