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2003年春生まれの「ブラック」は今春で3才になる。二ホンカモシカの世界ではもうおとなである。一般的にこどもは3〜5年、母親のナワバリのなかで生活し、いつの間にか姿を消す。別の場所に移動して自分のナワバリを持つのだが、移動先など詳しいところは分からない。
ブラックはオス、牛ノ首には「ミドリ」というオスのいわゆる先輩がいる。あまり広くない地域なので、同性のナワバリの重なりが成立しない両者は、いつか競合相手になる可能性が高い。「共に仲良く暮らす」というのは私たちの世界のルールだが、自然界では話し合いの余地がなく、追うか追われるかである。しかしまた反面、厳しい競合が淘汰にもなってバランスがとれる。
2005年冬に母親の「クロ」が死亡し、以来ブラックは単独で生活している。つまり2才からひとりになった。それまで金魚の糞のように母親のクロにくっついて歩いていたが、死後は、目の下にある眼下腺を擦りつけ、匂いを残すナワバリ行動をとる回数が多くなった。見た目はもう自立したオトナのカモシカだった。しかし、たくましさが増したことはミドリとの競合が近くなったこととも言え、複雑な想いで成長を見守った。
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