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「どこかで見たことがあるな?」。2003年秋、群れ周辺に現れたハナレザルを撮影しながら、ふと思った。記憶を辿ると「フクジュソウ」と名付けたメスザルの顔が浮かんだ。目元と視線はそっくり。この日は牛ノ首で懐かしい想いにかられた。 フクジョソウは1991年春にオスザルを出産した。北限のサルは長い冬を乗り切る為に基本的には肥満タイプ。なかでもフクジュソウは丸形でポッチャリしていた。性格がとくに穏やかで、威嚇することはほとんどなく、喧嘩を売られるようなことがあればさっさとこどもを抱えてその場から退散した。すぐ喧嘩する若いサルと違って、群れの中では緩衝剤的な重要な役割も持っていた。もうひとつ、サルが敵対する時に目を合わせるいわゆる「眼付け」はまったくせず、すぐに視線を逸らす。その目線が流し目に見え、それがまた色っぽかった。色気のあるサルだった。そんなこともあって、癒し系で福をもたらすフクジュソウと呼ばれていた。そんなこともあって91年のこどもは「コフク」。前年生まれの兄は「ダイフク」。まさに名前だけで福を授けてくれた。コフクは生後5カ年観察していたが、96年の観察を最後に群れから姿を消した。オスは生まれた群れを離れるニホンザルの定説通りであった。
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